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年明け……新学期早々、1年1組は驚愕の真実に打ちひしがれていた。
「えっと……」
真剣な面持ちで相談されたクラスメイトの佐藤君は、返答に窮す。
「あのさ……初デートもまだって事……?」
やっとの思いで絞り出したのは、そんな質問だ。
そんな茫然自失なクラスメイトの様子に、緋岐は何となくムッとなって応える。
「デートくらい、毎日してる。」
「たっ……例えば……?」
佐藤君が、恐る恐る尋ねると、やはりぶっきらぼうな声が返って来た。
「……部活終わったら、一緒に帰ってるし……」
その時、クラスの心は一つになった。

ーそれ、デートじゃないし!

そこに……

ガラッ

音を立てて開いた戸に、自然と視線が集まった。そこに居たのは、何も知らない子羊……もとい、天海 将その人だ。
クラスメイトの熱い視線に、将は思わず一歩退く。
「なっ……何……?」
将の言葉が早いか、はたまた女子が動くのが先か……
一斉に立ち上がった女子に、将は拉致されてしまったのだった。
それを機にクラスの男子は緋岐を取り囲む様に集結した。
中々のチームプレーである。
「クリスマスは!?恋人イベントだろ!」
取調室さながら、詰め寄るクラスメイトに、緋岐は困り果ててしまって、そっと兄に助けを求めた。……だが……何度呼び掛けても返事がない。

こんな時だけ狸寝入りするなよな!

心中で、思いっきり兄を詰る。
と、それまで思案に耽っているらしい緋岐の言葉を、固唾を飲んで待っていた男子生徒の一人が、痺れを切らして思わず口を開いた。
「どうなんだよ、鴻儒…デートしたのか?してないのか?」
そんな尋問に近い問い掛けに、緋岐は眉根を寄せながら応える。
「ヨンタさん騒動で、それどころじゃなかったというか……」
ヨンタさんが何者なのか、残念ながらこの場に居合わせた面子の中に、知る者はなかったが、ぶっちゃけそんな事は些細な問題でしかない。重要な……というか、大問題なのは……
「デートしなかったのかよ!?」
「まあ……そうなる……」
もはや、溜め息しか出ない。
そんなクラスメイトの様子に、弁明する様に緋岐は口を開いた。
「いや、でもプレゼントは渡したし……」
「えっ!?」
思いもしなかった予想外の出来事に、少年達の顔が期待に輝く。

「なぁんだ、決めるとこは決めてんじゃん。」
“心配して損した”など、緋岐にしてみれば、小さな親切にすらならない、一方的な思いやりの言葉を投げ掛けるクラスメート。
その中の一人が、純粋な好奇心から緋岐に尋ねた。
「で、何あげたんだ?」
「木刀。」
「…」
笑顔のまま凍り付いてしまった少年達に、緋岐は少し拗ねた様に続けた。
「木刀が折れて、困ってたんだよ。」
武道を嗜んでいなくとも、木刀がそう簡単に折れる代物ではないということは常識人ならば誰でも知っている事だ。

だからかそ……

“折れたから”とさらっと…顔色一つ変えず、さも当たり前と言わんばかりの緋岐が……

木刀を平気で折ってしまう紗貴が……

何より……

「そのプレゼントのチョイスはおかしいだろ!?」

赤いリボンの巻き付けられた竹刀……何と夢のない!

「いや、赤いリボンじゃなくて、ピンクだから。」
「問題はそこじゃないっ!」
ばんっ!
机に両手を叩き付けながら、佐藤君が熱弁を奮う。
「いいか!?済んでしまった過ちは、もう振り返っても仕方ない!」
「……何だよ、過ちって……」
そう緋岐が反抗したが、もう彼らの耳には届かない。佐藤君の言葉に拍手と声援が沸く。
「いいか!?このチケットを使って、デートに誘え!」
そうだ、そうだと相槌が巻き起こる。
「……だから、どうやって……」
「それは、今から我々が考える!江頭君、調査報告をっ!」
「はい。」
“江頭君”と呼ばれた、ビン底眼鏡を掛けている坊ちゃん刈の男子生徒が、すっと立ち上がる。すると、片手に手帳を広げると、一つ咳ばらいをしてから内容を読み上げ出した。
「一年三組委員長。」
「いや、誰でも知ってるし……」
「家族構成は、祖父、母、妹そして瑞智紗貴の四人家族。」
「それも知ってる…っていうか、チビだけど由貴はれっきとした男……つまりは弟だからな?ランドセルは黒いからな?」
「男気溢れる姐御肌で、武道にも優れ、熊を投げ飛ばした事もあるとか、ないとか。」
「どっちか、はっきりしろよ!」
緋岐のツッコミも何のその……江頭君の勢いは止まらない。
「しかし、意外と情に弱く、涙脆い。義理堅い事でも有名……そして……」
分厚い眼鏡の底が、キラリと光る。
「最新情報によると、彼氏からもらった初めてのプレゼントは“竹刀”。」
「今、俺が言ったよな!?」
当人である筈の緋岐の訴え(?)も何のその……佐藤君が思慮深げに頷く。

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