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Data3/28 17:50
To.さと兄
Sub.ヘルプ
<本文>
バスジャックされた
犯人はチビ、デブ、ハゲの三重苦年齢不詳の男性
助けて
――――――――――
「瑞智……どうだ?」
緋岐は注意は逸らさずに、声を潜めて言う。
「送ったわ」
紗貴も伺いながら、短くそう応えた。
バスジャック犯の出で立ちは、紗貴のメールの通り、余りにも貧相で…
乗り合わせた勇敢な帰宅途中のサラリーマン数人が挑んだのだ。
だが、それは事如く失敗に終わった。
運が良いのだ。この犯人は…異様なまでに…
決して犯人が武道に優れているわけでも、運動能力がずば抜けて良いわけでもない。
ただひたすらに運が良いのだ。
「こいつ!」
また一人、中高年のサラリーマン風の男性が勇猛果敢に立ち向かう。
だが今度はいつ落ちたのか、空き缶を踏んでしまい思い切り転倒し、そのまま気を失ってしまった。
これで何人目だろう…
一人は、高校生のショルダーバッグに足を引っ掻けて転倒した。
次は、上の網棚から落下したボストンバッグが直撃した。
二人掛かりで挑んだ時は、靴紐を結び直す為に屈んだ犯人の上で、同志討ちとなった。
「とことん、運がいいやつだな…」
いや…違う…
「…詆歌……?」
あいつ…憑かれてやがるな。
「…憑く?」
「気付いた?…あの人、“妖”に成りかけてる…闇が憑いてる。」
紗貴の言葉に、緋岐は言葉を失った。
事の発端は遡る事3時間程前……
※
「もう来たの……」
蘭子は胡散臭さそうな視線を、訪問客に投げかけた。
その言い様に、多少顔をしかめながら応える。
「悪いかよ、待ち合わせ時間通りだろ?」
怯まない相手に、蘭子はさも当然と言わんばかりに言い放つ。
「5分早い!5分も私と紗貴の時間を邪魔しおって……」
その余りの言い草に、緋岐もムッとして噛み付いた。
「なら、遅れて来た方が良かったのかよ。」
その言葉に蘭子は冷ややかな笑みを湛えて言う。
「ほう?貴様から誘っておきながら、遅刻するつもりとは、良い度胸ね。」
流石に二の句が告げない。何をどうやって来ても、結局のところ蘭子の腹の虫は収まらないというわけで……
余りの理不尽さに返す言葉を失ったのだった。
To.さと兄
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<本文>
バスジャックされた
犯人はチビ、デブ、ハゲの三重苦年齢不詳の男性
助けて
――――――――――
「瑞智……どうだ?」
緋岐は注意は逸らさずに、声を潜めて言う。
「送ったわ」
紗貴も伺いながら、短くそう応えた。
バスジャック犯の出で立ちは、紗貴のメールの通り、余りにも貧相で…
乗り合わせた勇敢な帰宅途中のサラリーマン数人が挑んだのだ。
だが、それは事如く失敗に終わった。
運が良いのだ。この犯人は…異様なまでに…
決して犯人が武道に優れているわけでも、運動能力がずば抜けて良いわけでもない。
ただひたすらに運が良いのだ。
「こいつ!」
また一人、中高年のサラリーマン風の男性が勇猛果敢に立ち向かう。
だが今度はいつ落ちたのか、空き缶を踏んでしまい思い切り転倒し、そのまま気を失ってしまった。
これで何人目だろう…
一人は、高校生のショルダーバッグに足を引っ掻けて転倒した。
次は、上の網棚から落下したボストンバッグが直撃した。
二人掛かりで挑んだ時は、靴紐を結び直す為に屈んだ犯人の上で、同志討ちとなった。
「とことん、運がいいやつだな…」
いや…違う…
「…詆歌……?」
あいつ…憑かれてやがるな。
「…憑く?」
「気付いた?…あの人、“妖”に成りかけてる…闇が憑いてる。」
紗貴の言葉に、緋岐は言葉を失った。
事の発端は遡る事3時間程前……
※
「もう来たの……」
蘭子は胡散臭さそうな視線を、訪問客に投げかけた。
その言い様に、多少顔をしかめながら応える。
「悪いかよ、待ち合わせ時間通りだろ?」
怯まない相手に、蘭子はさも当然と言わんばかりに言い放つ。
「5分早い!5分も私と紗貴の時間を邪魔しおって……」
その余りの言い草に、緋岐もムッとして噛み付いた。
「なら、遅れて来た方が良かったのかよ。」
その言葉に蘭子は冷ややかな笑みを湛えて言う。
「ほう?貴様から誘っておきながら、遅刻するつもりとは、良い度胸ね。」
流石に二の句が告げない。何をどうやって来ても、結局のところ蘭子の腹の虫は収まらないというわけで……
余りの理不尽さに返す言葉を失ったのだった。
それから紗貴が出て来るまでの間、ずっと睨み合いは続いていて……
その無言の熾烈な戦いに恐れおののいて、犬猫は勿論の事、鳥や虫といったありとあらゆる生物が半径1メートル以上近付かない様、遠巻きに通り過ぎて行ったのだが、本人達は知る由もない。
名目は“将のプレゼント選び”だが、立派なデートだ。
しかも、付き合い出して、約半年……
初デートである。
『待った?』
『いや、今来たとこ』
のような、シチュエーションでないのは残念この上ないが…
GパンTシャツで出掛けるつもりだった紗貴を見事に阻止し、身支度を整えてくれた蘭子に感謝するしかない。
花柄ワンピースに髪も編み上げられたその出で立ちは、いつもの紗貴とは何だか違う。
だが、素直な褒め言葉も出なくて…
詆歌もだんまりだ。珍しく照れているらしかった。
「やっ…やっぱり、変かな」
沈黙に耐え兼ねた紗貴が言う。
『違う』と否定したかったが、それより先に蘭子が口を開いた。
「私がコーディネートしたんだ。そんな訳あるはずがないでしょ?」
そして、なかなか出掛けようとしない二人に痺れを切らした蘭子が、半ば強引に紗貴を玄関から緋岐の方へと押し出したのだった。
そして…
とりあえず、色んなお店を見て歩いてプレゼントを手に入れた後、喫茶店でお茶をして…
空も茜色に染まりはじめた頃合い。
バスに乗って帰途に着いたところで、今回の冒頭に戻る。
確かに……確かに、『まだ帰りたくないな』とか思ったけど!
緋岐は何に対してか判らない言い訳を必死にする。
緋岐、落ち着け…
詆歌が溜息混じりに、そう窘める。
その時…
「何でそうなるのよ!警察が市民を見捨てるなんて!」
憤慨したらしい紗貴の苛立った声が響いた。
「だから落ち着け!お前達!」
「ていちゃん、このメール見て落ち着けと!?」
どこぞの御隠居が、印籠を見せるが如く、詆歌の顔面にずずいと携帯の液晶を押し付ける。
「だから、何で俺と緋岐の見分けが付くんだよ…っていうか“ちゃん”付けやめろ…」
ぶつぶつ言いながらも携帯を受け取る。
「……あんのクサレ警察がぁ!」
「ちょっとタンマ、落ち着いて!それ私の携帯!」
ミシミシと不穏な音を立てる携帯に、紗貴が慌てて止めに入る。
その無言の熾烈な戦いに恐れおののいて、犬猫は勿論の事、鳥や虫といったありとあらゆる生物が半径1メートル以上近付かない様、遠巻きに通り過ぎて行ったのだが、本人達は知る由もない。
名目は“将のプレゼント選び”だが、立派なデートだ。
しかも、付き合い出して、約半年……
初デートである。
『待った?』
『いや、今来たとこ』
のような、シチュエーションでないのは残念この上ないが…
GパンTシャツで出掛けるつもりだった紗貴を見事に阻止し、身支度を整えてくれた蘭子に感謝するしかない。
花柄ワンピースに髪も編み上げられたその出で立ちは、いつもの紗貴とは何だか違う。
だが、素直な褒め言葉も出なくて…
詆歌もだんまりだ。珍しく照れているらしかった。
「やっ…やっぱり、変かな」
沈黙に耐え兼ねた紗貴が言う。
『違う』と否定したかったが、それより先に蘭子が口を開いた。
「私がコーディネートしたんだ。そんな訳あるはずがないでしょ?」
そして、なかなか出掛けようとしない二人に痺れを切らした蘭子が、半ば強引に紗貴を玄関から緋岐の方へと押し出したのだった。
そして…
とりあえず、色んなお店を見て歩いてプレゼントを手に入れた後、喫茶店でお茶をして…
空も茜色に染まりはじめた頃合い。
バスに乗って帰途に着いたところで、今回の冒頭に戻る。
確かに……確かに、『まだ帰りたくないな』とか思ったけど!
緋岐は何に対してか判らない言い訳を必死にする。
緋岐、落ち着け…
詆歌が溜息混じりに、そう窘める。
その時…
「何でそうなるのよ!警察が市民を見捨てるなんて!」
憤慨したらしい紗貴の苛立った声が響いた。
「だから落ち着け!お前達!」
「ていちゃん、このメール見て落ち着けと!?」
どこぞの御隠居が、印籠を見せるが如く、詆歌の顔面にずずいと携帯の液晶を押し付ける。
「だから、何で俺と緋岐の見分けが付くんだよ…っていうか“ちゃん”付けやめろ…」
ぶつぶつ言いながらも携帯を受け取る。
「……あんのクサレ警察がぁ!」
「ちょっとタンマ、落ち着いて!それ私の携帯!」
ミシミシと不穏な音を立てる携帯に、紗貴が慌てて止めに入る。
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皆さん、よろしくお願いしますm(__)m
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