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兄と彼女が

羨ましいなんて

今更言えない

つまらない男の意地とか

プライドとかが邪魔していて…

きっと

それは

とても簡単なこと。

そして

俺には

とても難しいこと。



「しっかり運転しやがれ!」
「ゴーカートしか運転した事ないんだから、いきなり大型車の運転なんて出来るわけないでしょ!?なめないで!」
犯人が真っ青になりながら、抗議の声を上げる。
紗貴も必死だ。アクセルとブレーキの区別もままならない。
ハンドルを抱える様に握りしめており顔面は蒼白を通り越して、限りなく白に近い。
視線は真っ直ぐ前を見据えたまま瞬き一つしはしない。
「ちょっと、どいてよね!」
必死に叫んだところで、外に聞こえるはずもなく…
迷惑極まりない暴走バスに、クラクションの大合唱が抗議の声を上げる。
「次の交差点を右だ!」
「みっ……右ねっ!」
言うなり、バス車内を多大な遠心力が襲った。
「お前、アホか!?ブレーキくらい踏め!」
思わず後部座席から詆歌が声を上げる。どうやら頭を強かに窓へ打ち付けたらしく、幾分目に涙を溜めたまま頭をさすっている。
「アクセルとブレーキ間違ったの!気が散るから、ていちゃん黙ってて!」
苛立ちを隠しもせずに負けじと紗貴も叫ぶ。
この状況…というよりこの緊迫した空気の中、極々普通に会話をする少年少女の豪胆さを誉めるべきか、それとも無神経さを呆れるべきか…
それすら選択する余裕が、今の乗客にはない。
無理もなかろう。
バスジャックされたというだけでも不運を嘆くに値するというのに、今正にバスは命懸けのカーチェイスに突入したのだから…
後方からは、サイレンの音が明らかにこのバスを追っている。
バスの異常に気付いた一般人の誰かが通報したのだろう。
「そこのバス止まりなさい」
と、これまた何の捻りもない決まり文句が聞こえて来た。
「ねえちょっと、止まれって言われてるわよ!?」
紗貴が、犯人にお伺いを立てる。返答内容は予想するに難くない。
「止まれと言われて誰が止まるか!」
興奮状態の犯人は、紗貴の首筋に刃渡り10cm程の果物ナイフを突き付けた。
突き付けられたところから、血が滲む。
それを見た詆歌の血相が、明らかに変わった。
視線だけで殺せそうな…そんな迸る殺気を身に纏う。

「…緋岐、いいな?」
それは伺いを立てるというよりも、確認に限りなく近い。

待て、詆歌…俺に少し変わってくれないか?

「でもなぁ!」
声は抑えているものの、苛立ちと焦燥が隠しきれない。

頼む……

結局、詆歌が緋岐の頼みを断れる筈もなくて…
しかも、真摯な態度で冷静に頼まれたのであっては、尚更だ。
「無茶はするな。」
そう一言残し、主導権を緋岐へと渡したのだった。
「なあ、あんたは何がしたいんだ?」
紗貴は、振り返らないまでも、少年が入れ替わった事を察知して、名を呼ぶ。
「鴻儒く…?」
緋岐は少し目を見開き一瞬だけ紗貴に視線を向けた後、犯人へ視線を戻し再度言う。
「あんたは、何がしたくてこんな事やったんだ?」
その言葉に、血走った視線を犯人は向ける。
「帝東大学に突っ込んで、奴らに一泡吹かせてやるんだ。」
ここまで来て明らかになったバスジャックの真の目的に、場が凍り付く。
ただ一人、緋岐を除く全員が固唾を飲み込んだ。
「で?原因は何なんだ?」
「5年だ!…帝東大に落ち続けて…俺の何がいけないって言うんだ!?」
「…まさか、受験に失敗したから?」
「ああそうだ。生まれた時から、俺の道は決まっていた。」
いきなり始まったまさかの身の上話に、そんな場合ではないと判っていても、興味は深まる。
「父母は勿論、両家の祖父母まで帝東大卒業。兄2人も現役帝東大生…今年からは弟も現役帝東大生だ。」
つまりは、エリートだと言いたいのか…話しながら、犯人の声は涙にうち震える。
「しかも俺の名前は東 大行(ひがし ひろゆき)…帝東大に行く事を運命付けられているような名だとは思わないか!?」
突然同意を求められた哀れな老夫婦が、言葉もなく何度も頷く。
「なのに!俺は帝東大に行く事を運命付けられているはずなのに!なんでっ…」
打ちひしがれる犯人改めて大行を眺めながら、緋岐はどこか胸が痛むような感覚に苛まれ、無意識のうちに自分の胸を掴んだ。
それでも、大行から目を逸らさずに、一言一句大切に、自分自身にも言い聞かせるように紡ぐ。

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