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「思ったより、スゴくないね。」
「バー!ドバー!みたいなの、期待してたのにね。」
眉をハの字に曲げて、て肩を落とす紗貴と将。
「悪かったな。ご期待に添えなくて。」
仲良く顔を見合わせて理不尽な抗議をあげる二人の間に、さり気なく割って入るのが鴻儒緋岐その人だ。
若干2名の注目の的となっている自分の下駄箱から、溜め息をつきながら上履きを出す。
今日は、バレンタインデーだ。学校一の色男、鴻儒 緋岐の下駄箱ならば、良く漫画やらドラマやらで見掛けるチョコレートが溢れ返る様を見れると、紗貴も将もウキウキと本人そっちのけで開けた訳だが……
そこには、綺麗にラッピングされた小包が一つ、ポツンとあるだけだったのだった。期待外れもいいところだ。
三者三様の反応を横目に、蘭子はスタスタと横を通り過ぎながら、いきなり例え話を始める。
「カッコウという鳥の習性を知ってるか?」
そう切り出されて、三人は思わず顔を見合わせた。
「自分の子供を大切に育ててもらう為、他の卵を蹴落として、自分の卵を置いて去るんだ。」
そこまで言って立ち止まるのがごみ箱の前。
「他のヤツが入れたチョコがあったら、自分のチョコが霞むでしょう?」

自分のチョコレートだけを見て欲しい!

そんな可愛い独占欲が、女の子達をカッコウへと変貌させる。

「いわば、カッコウは女子、チョコレートは卵……そして……」
舒に開けられたごみ箱の中には、可愛いラッピングを施された包みが幾つか入っている。
メッセージ付きのものも、中にはあって……
そのうちの一つを蘭子は拾い上げた。
「捨てられた卵を狙う森のハンターが、この私。」
心なしか、蘭子の目がキラリと光る。
「なっ……なるほど…」
うーんと唸りながら頷く紗貴。
「蘭子さん、すごい推理力だね!」
妙に感心する将。そして……相変わらず、口を挟むタイミングを逸し、ただ事の成り行きを見守るのは緋岐だ。
思わず溜息が漏れてしまう。それを見逃さずに蘭子が緋岐の前で仁王立ちする。
「何か、問題でも?」
その挑戦するような物言いに、蘭子が抱えるチョコレートの本来の持ち主は、再度面倒臭さそうに溜息をつく。
「別に、何も言ってないし。」
「食べ物を粗末にする奴には罰が当たってしまえ。」
「捨てたの、俺じゃないし。」
「なんだ?今更、権利を主張するのか?」
この二人、何かと言っては衝突する。

虫が合わないとでも言おうか……とにかく、事あるごとに熾烈な口論が繰り広げられるのだ。
大抵の場合、蘭子が火蓋を切るのだが、それは大した問題ではないだろう。
とにかく、もう日常の光景になりつつあるこの応酬。まるでマングースとコブラの闘いだ。日常となりつつあっても、心臓に悪い。
だがしかし、慣れとは末恐ろしいものである。紗貴は、“また始まったか”と言わんばかりに肩を一度竦めると、将を振り返る。
将はというと、いつまで経っても慣れないバトルに、ただ青ざめるだけだ。
「将くん、大丈夫?」
心配そうに聞いて来る紗貴に、将は渇いた笑い声で答える。
「さっちゃんは、この空間で良く普通でいられるね……」
素直な感想だ。蘭子と緋岐の周りに渦巻く重苦しい空気は、呼吸困難になりそうだ。
「もう慣れたわ。」
そんな空気も何のその。紗貴はサラリと答える。更に、爆弾発言が続いた。
「それにほら、喧嘩するほど仲が良いって言うし。」
本人達が聞いていたら、泣いて怒って必死に否定するだろう。
将はもう“ソーダネ”と頷くしかなかった。
「それより……はい、これ。」
「え?」
もう完全に蘭子と緋岐は眼中にないらしい紗貴は、ガサゴソと自身の手荷物を漁ると、ラッピングされた小包を4つ将に手渡した。
「これが、母さんからね。で、これが私から……後は、マリスとレノスに。」
「ありがとう」
毎年の事ながら、頬が緩む。否、紗貴が京都へ修業に行っていた5年間はご無沙汰だった為、余計に何だか照れ臭い。
そのはにかんだ笑みに、紗貴もつられて笑顔になった。
「どう致しまして。」
「マリスとレノスにまで…ありがとう。2人とも喜ぶよ。」
因みに、マリスとレノスというのは、幻獣と呼ばれる将の使い魔である。
「2人にも、いつもお世話になってるからね。」
援護者である将と共に、紗貴をいつも影で支える縁の下の力持ちだ。

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