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風の向くまま、気の向くままに更新します♪ ホームページと連動しておりますので、HPの方もよろしくお願いしますm(._.)m
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このたび、ホームページをお引越しすることとなりましたm(_ _)m

理由は、兼ねてより言っていた環境です。。。

父と共用のパソコンでは、更新がいつまで経っても難しい。。。と判断し、携帯からでもアップできるサイトへと、変身させました♪

古い話から、順にアップしなおしている段階で、完璧なお引越しはまだ済んでいない状態です(><)
なので、引越しが済んだ話から、こちらでの公開は停止させて頂いております。

新しいURLは↓の通り
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=saramugensou
(※パソコンから閲覧のお方は、右上の[ケータイMode表示]をクリックしてからお楽しみ下さいwww)

それでは、今後ともよろしくお願い致します。



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そっと近付くと、ぐいっと紗貴の肩を引き上げる。
「ちょっ!?」
肩を抱き寄せられた様な体勢に、紗貴は顔を真っ赤にして抗議の声を上げる。が、全く身体には力が入っていなくて…
「案外、軽いんだな。」
反論出来ない紗貴を、ここぞとばかりにからかう緋岐。
「うっ……」
真っ赤なまま、言葉もなかったが、レスキュー隊員に促されるまま迎えに来た車に乗り込む。そして遠慮がちに緋岐を窺い見ながら、紗貴が口を開いた。
「あの、ホントにごめんね…ありがとう…」
「もう、聞き飽きたよ…」
苦笑しながら応える緋岐に、紗貴は返す言葉がなくて…
「何か、いつも助けられてばっかりだね…」
そう小さな声で呟いた紗貴を思案げに見つめていた緋岐は、重たい口を開いた。
「じゃあさ、一つお願いがあるんだけど…」
「何?私に出来る事なら何でも言って!」
紗貴のその、一点の曇りもない純粋な眼差しに、緋岐は少し口ごもりながら言う。
「名前…名字じゃなくてさ、名前で呼んで欲しいんだけど…」

ずっと言いたかった事

そして

ずっと言えなかった事

今更だ……

今更、兄が羨ましいなんて、言い難くて…

でも

「紗貴」と自然に呼び捨てにしてしまえる事が

「ていちゃん」と名前で呼ばれている事が羨ましくて…


たかが名前

されど名前

お互い、名字で呼び合うそこに、見えない壁があるような錯覚に幾度陥った事か…

「え……え?いや……」

動揺を露にした紗貴に、何となくムッとして緋岐は続ける。

「詆歌は“ていちゃん”で何で俺は“鴻儒くん”なんだよ…」

そのもっともな抗議に、紗貴はしどろもどろに応える。

「いや、だって…二人とも“鴻儒くん”だと解り辛いし…」

呼びたい名前がある

でも

いざ呼ぼうとしても

それは口には出来なくて…

このもどかしい気持ちの名前を

紗貴はまだ知らないのだ。

どう自分の思いを伝えたものか、考えあぐねて…紗貴は反撃に出た。

「そっちだって…名字じゃない…」
「え?」
「さっきは、名前で呼んでくれてたけど。」
「いや、さっきのは咄嗟の出来事で…」
形勢逆転である。先程までは問い詰める側だった筈なのに、
言葉が見付からない。

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バスの中に、悲鳴が連鎖する。

それは、刃を向けられた少女に対してか

はたまた暴走バスの前で不幸にも硬直してしまっている青年に対してなのか

或いは双方に対してのものか…

叫ぶ本人達でさえ判らないというのが、本音かも知れない。

ともかく、緋岐の視界を支配しているのは、今まさに紗貴に襲い掛からんとする、大行の刃だった。
他の悲鳴など、聞こえてすらいない。
考えるより先に、身体が動いていた。
こんな恐怖を感じたのは、初めてかもしれない。

「紗貴!」

全ての動きが、緩慢に感じてもどかしい。

手を必死に伸ばした。届く様で触れる事さえ出来ない距離に、焦燥に駆られる。

キイィィィッ!

急ブレーキに、バスが耳障りな悲鳴を上げた。

その悲鳴に混じって、何かが破裂する様な音が響く。
だが、そんな物音に耳を傾ける余裕が、この状況下である筈もなく…

急ブレーキと同時に、大きくハンドルを切られたバス車内は、自身の重心すら保てない程の遠心力に襲われた。
半恐慌状態の車内で、人ならば受けるであろう慣性をまるで無視した動きの三人に気を留める者はなかった。

「俺をっ…俺を馬鹿にするなぁ!」
狂気に満ちた、大行の眼差しを運転席から立ち上がり対峙した紗貴が真っ向から受け止める。
「天降し依さし奉りき……」
向けられた刃に臆する事なく、手で印を組むと、大行に憑いた妖を祓う呪を唱え始めた。

ヤメロ

ヤメサセロ!

「せっかく、手に入れた力を手放してなるかぁ!」

オンナ ヲ コロセ!!

渦巻く狂気に身を委ね、甘美な闇の囁きのまま、容赦なく刃を紗貴に向ける。

ザクッ!

肉を裂く独特の感覚に陶酔する間もなく、大行の目は大きく見開かれた。

紗貴へと躊躇いなく振り下ろされた刃は、だがしかし紗貴の頬を掠めただけに終わったのだ。

柄を伝い、血が滴る。

「遺る罪は在らじと 祓え給え 清め給ん……裁禍!」

一瞬で事は収束を迎えた。

紗貴が印を切ると同時に、緋岐が大行を投げ飛ばす。

大行に憑いていた妖が祓われた事により、意識を取り戻したバスの運転手と、サラリーマン風の男性が数名で、大行を取り押さえた。

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お久しぶりです♪

いつも読んでくださる方々、不穏なカーチェイスでストップしてしまっていて、大変申し訳ございません

ただいま、鋭意執筆中ですので、今しばらくお待ち下さい!

バレンタインの続きも、実は待ってくださっている方がいて下さるようで…

筆者は「あんな話、もう忘れられたよねー」と放置を決め込んでいたので、大変驚いております!急ぎこちらも執筆しようと考えているので、しばしお待ち下さい(><)

そして、拍手ボタンの設置を変更してみました♪

ただ、設置の仕方がいまいち判らず、何だか変なところに拍手ボタンがあるのですが、気軽にポチッとしていただければと思いますwww

では、これからもどうぞよろしくお願い致します

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「運命なんて…どこにもない……道は、自分で切り開くものだ……」

自分の運命を
存在そのものを
呪った事がある

赦されない罪に
眠れない日を
幾夜過ごしただろう?

それでも…

「悲しいことや辛いことがあったとしても…うちのめされても、一生抜け出すのは無理だなんて……そんなこと、ないんだ…」

例えば
もう一度笑ったり
誰かを好きになったり…

「誰にだって、出来るんだ…」

大行はその言葉を受けて、皮肉に歪んだ笑みを口許に浮かべた。
緋岐を睨み付けるその双眸は、妬みの色に染まりきっている。
「いいよなぁ…お前みたいな恵まれてる奴には、わかんないよなぁ!」
闇が、じわじわと内側から大行を侵食していく。
「どうせ、心の中じゃ笑ってるんだろ!?」
「なっ……そんな事ない……」
緋岐の否定を、大行は鼻で笑い飛ばす。
その瞳は常軌を逸していた。
「何もかも、不自由なくて…悩み何かねえから、そんなエラソーな事言えるんだよ!」
その言葉に気色ばんだのは、緋岐ではなく詆歌だ。

黙って聞いてりゃ、調子に乗りやがって…

うちから沸く、自身のものではない純粋な“怒り”に緋岐は慌てる。
「詆歌…ダメだ…」

うるせぇ!代われ緋岐!こんなヤツ…

そこまでだった。詆歌の言葉が遮られる。
遮ったのは、けたたましいバスのクラクションだ。
自然と視線は紗貴に集まる。
「さっきから、黙って聞いてりゃ…」
相も変わらず、紗貴の視線は前を向いたままだ。
だが後ろ姿から迸しる殺気は、一般人をも怯ませる。
「人間生きてりゃねぇ、二つや三つや四つや五つくらい悩みあるのよ!」
「いや…五つはいくらなんでも多過ぎじゃ…」
行大は思わず…遠慮がちに言う。しかし…
「うるさい!黙れ!このミクロ!」
紗貴の罵倒が勝っていた。
「ミッ…ミクロ…?」
「あんたなんて、何の度胸もない…ただ逃げてばかりの臆病風に吹かれてる、ちっちゃい、けつまらない男なだけじゃない!」

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兄と彼女が

羨ましいなんて

今更言えない

つまらない男の意地とか

プライドとかが邪魔していて…

きっと

それは

とても簡単なこと。

そして

俺には

とても難しいこと。



「しっかり運転しやがれ!」
「ゴーカートしか運転した事ないんだから、いきなり大型車の運転なんて出来るわけないでしょ!?なめないで!」
犯人が真っ青になりながら、抗議の声を上げる。
紗貴も必死だ。アクセルとブレーキの区別もままならない。
ハンドルを抱える様に握りしめており顔面は蒼白を通り越して、限りなく白に近い。
視線は真っ直ぐ前を見据えたまま瞬き一つしはしない。
「ちょっと、どいてよね!」
必死に叫んだところで、外に聞こえるはずもなく…
迷惑極まりない暴走バスに、クラクションの大合唱が抗議の声を上げる。
「次の交差点を右だ!」
「みっ……右ねっ!」
言うなり、バス車内を多大な遠心力が襲った。
「お前、アホか!?ブレーキくらい踏め!」
思わず後部座席から詆歌が声を上げる。どうやら頭を強かに窓へ打ち付けたらしく、幾分目に涙を溜めたまま頭をさすっている。
「アクセルとブレーキ間違ったの!気が散るから、ていちゃん黙ってて!」
苛立ちを隠しもせずに負けじと紗貴も叫ぶ。
この状況…というよりこの緊迫した空気の中、極々普通に会話をする少年少女の豪胆さを誉めるべきか、それとも無神経さを呆れるべきか…
それすら選択する余裕が、今の乗客にはない。
無理もなかろう。
バスジャックされたというだけでも不運を嘆くに値するというのに、今正にバスは命懸けのカーチェイスに突入したのだから…
後方からは、サイレンの音が明らかにこのバスを追っている。
バスの異常に気付いた一般人の誰かが通報したのだろう。
「そこのバス止まりなさい」
と、これまた何の捻りもない決まり文句が聞こえて来た。
「ねえちょっと、止まれって言われてるわよ!?」
紗貴が、犯人にお伺いを立てる。返答内容は予想するに難くない。
「止まれと言われて誰が止まるか!」
興奮状態の犯人は、紗貴の首筋に刃渡り10cm程の果物ナイフを突き付けた。
突き付けられたところから、血が滲む。
それを見た詆歌の血相が、明らかに変わった。
視線だけで殺せそうな…そんな迸る殺気を身に纏う。

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Data3/28 18:09
To.さと兄

Sub.Re:ヘルプ

<本文>
テメーらで何とかしろ
今日の俺は非番だ。休みだ。巻き込むな。

――――――――――

「あいつっ…職務怠慢で訴えてやる!」

「おい……」

「ホント…市民のピンチなのに…っていうか“ていちゃん”でいいじゃん」

「あの…」

「はぁ!?俺は男だ!“ちゃん”付けるな!お前…紗貴“ちゃん”って呼ぶぞ!?」

「だから……」

「いや、それは堪忍して…今更ていちゃんに“ちゃん”付けされたら鳥肌立ちそう」

「すみません…」

「だから!“ちゃん”付けするな!」

「だから!人の話を聞け!!」

「「うるさいな!!」」

詆歌と紗貴の綺麗なユニゾンに、犯人が一瞬ビクリとするが、そんな犯人を見て自分達の状況を思い出した様に、詆歌と紗貴は硬直してしまった。
詆歌の中で、緋岐は溜息をつくばかりだ。
「おっ……お前達、自分の立場が判ってるのか!?」
刃渡り10cm程の果物ナイフを両手で握りしめた犯人の顔は憔悴し切っており、いまいち迫力に欠ける。
だが、詆歌と紗貴は用心深く両手を上げた。
「どいつもこいつも、俺を馬鹿にしやがって!」
そう吐き捨てるように言う犯人の闇が、一層深くなる。
「…すみません……」
素直に紗貴が謝る。その耳元で詆歌が囁くように言う。
「いっその事、思い切って祓っちまうか?」
その物騒な物言いを、紗貴は視線で制した。

公衆の面前で力を行使する事は、堅く禁じられているのだ。

詆歌は、仏頂面のまま「判ってる」そう短く返事をすると、ふいっと顔を逸らす。
「おい!」
「え?私……?」
話し掛けられた紗貴が振り仰ぐ様に見上げれば、犯人の男が顔を真っ赤にして指差していた。

拍手

Data3/28 17:50
To.さと兄

Sub.ヘルプ

<本文>
バスジャックされた
犯人はチビ、デブ、ハゲの三重苦年齢不詳の男性

助けて

――――――――――

「瑞智……どうだ?」
緋岐は注意は逸らさずに、声を潜めて言う。
「送ったわ」
紗貴も伺いながら、短くそう応えた。
バスジャック犯の出で立ちは、紗貴のメールの通り、余りにも貧相で…
乗り合わせた勇敢な帰宅途中のサラリーマン数人が挑んだのだ。
だが、それは事如く失敗に終わった。
運が良いのだ。この犯人は…異様なまでに…
決して犯人が武道に優れているわけでも、運動能力がずば抜けて良いわけでもない。
ただひたすらに運が良いのだ。
「こいつ!」
また一人、中高年のサラリーマン風の男性が勇猛果敢に立ち向かう。
だが今度はいつ落ちたのか、空き缶を踏んでしまい思い切り転倒し、そのまま気を失ってしまった。
これで何人目だろう…
一人は、高校生のショルダーバッグに足を引っ掻けて転倒した。
次は、上の網棚から落下したボストンバッグが直撃した。
二人掛かりで挑んだ時は、靴紐を結び直す為に屈んだ犯人の上で、同志討ちとなった。
「とことん、運がいいやつだな…」

いや…違う…

「…詆歌……?」

あいつ…憑かれてやがるな。

「…憑く?」
「気付いた?…あの人、“妖”に成りかけてる…闇が憑いてる。」
紗貴の言葉に、緋岐は言葉を失った。

事の発端は遡る事3時間程前……



「もう来たの……」
蘭子は胡散臭さそうな視線を、訪問客に投げかけた。
その言い様に、多少顔をしかめながら応える。
「悪いかよ、待ち合わせ時間通りだろ?」
怯まない相手に、蘭子はさも当然と言わんばかりに言い放つ。
「5分早い!5分も私と紗貴の時間を邪魔しおって……」
その余りの言い草に、緋岐もムッとして噛み付いた。
「なら、遅れて来た方が良かったのかよ。」
その言葉に蘭子は冷ややかな笑みを湛えて言う。
「ほう?貴様から誘っておきながら、遅刻するつもりとは、良い度胸ね。」
流石に二の句が告げない。何をどうやって来ても、結局のところ蘭子の腹の虫は収まらないというわけで……
余りの理不尽さに返す言葉を失ったのだった。

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「蘭子にもあるよー。」
ピクリと反応すると、抱えていた包みの山を半ば緋岐に押し付ける様にして、紗貴の前へ移動する。
その動きは滑らかで無駄がない。
「ありがとう、紗貴。」
手を取り感動する親友に、紗貴は笑顔で答える。
「どう致しまして。」
と、ここで蘭子はくるりと緋岐の方へ首だけ回して、シッシッと追い払う様な仕種をしながら口を開いた。
「私には、紗貴のチョコレートがあれば充分だ。お前にそのチョコレートの山は返してやる。」
「いらねえよ。俺、甘いの苦手なんだよ。お前拾ったなら責任取って持っていけよ。」
はっとしても、もう遅い。紗貴と目線が合ったが、どうにも気まずくて逸らしてしまった。

『甘いもの……一つくらいなら食べれるし……』

『俺は、甘いもの好きだから。』

紗貴に、それとなくチョコレートを催促したのがつい先日。なのに……本人を目の前に、チョコレート苦手宣言をかましてしまうという大失態を犯してしまったのだ。
売り言葉に買い言葉とはいえ、後悔したとて後の祭り。

波乱(?)のバレンタインは、こうして幕を開けたのだった。

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「思ったより、スゴくないね。」
「バー!ドバー!みたいなの、期待してたのにね。」
眉をハの字に曲げて、て肩を落とす紗貴と将。
「悪かったな。ご期待に添えなくて。」
仲良く顔を見合わせて理不尽な抗議をあげる二人の間に、さり気なく割って入るのが鴻儒緋岐その人だ。
若干2名の注目の的となっている自分の下駄箱から、溜め息をつきながら上履きを出す。
今日は、バレンタインデーだ。学校一の色男、鴻儒 緋岐の下駄箱ならば、良く漫画やらドラマやらで見掛けるチョコレートが溢れ返る様を見れると、紗貴も将もウキウキと本人そっちのけで開けた訳だが……
そこには、綺麗にラッピングされた小包が一つ、ポツンとあるだけだったのだった。期待外れもいいところだ。
三者三様の反応を横目に、蘭子はスタスタと横を通り過ぎながら、いきなり例え話を始める。
「カッコウという鳥の習性を知ってるか?」
そう切り出されて、三人は思わず顔を見合わせた。
「自分の子供を大切に育ててもらう為、他の卵を蹴落として、自分の卵を置いて去るんだ。」
そこまで言って立ち止まるのがごみ箱の前。
「他のヤツが入れたチョコがあったら、自分のチョコが霞むでしょう?」

自分のチョコレートだけを見て欲しい!

そんな可愛い独占欲が、女の子達をカッコウへと変貌させる。

「いわば、カッコウは女子、チョコレートは卵……そして……」
舒に開けられたごみ箱の中には、可愛いラッピングを施された包みが幾つか入っている。
メッセージ付きのものも、中にはあって……
そのうちの一つを蘭子は拾い上げた。
「捨てられた卵を狙う森のハンターが、この私。」
心なしか、蘭子の目がキラリと光る。
「なっ……なるほど…」
うーんと唸りながら頷く紗貴。
「蘭子さん、すごい推理力だね!」
妙に感心する将。そして……相変わらず、口を挟むタイミングを逸し、ただ事の成り行きを見守るのは緋岐だ。
思わず溜息が漏れてしまう。それを見逃さずに蘭子が緋岐の前で仁王立ちする。
「何か、問題でも?」
その挑戦するような物言いに、蘭子が抱えるチョコレートの本来の持ち主は、再度面倒臭さそうに溜息をつく。
「別に、何も言ってないし。」
「食べ物を粗末にする奴には罰が当たってしまえ。」
「捨てたの、俺じゃないし。」
「なんだ?今更、権利を主張するのか?」
この二人、何かと言っては衝突する。

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携帯ゲームに手を出してみました
絵とか、設定とか……何となくですが、好きです

もし、よろしければ皆様もどうぞ(ジャンル的には、恋愛シュミレーションらしいのですが、小説感覚で読めます)

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話を戻そう。
紗貴とて、最初からチョコレート戦線離脱を考えた訳ではない。
何をあげようか

何を作ろうか

考えいた矢先に、遭遇したのだ。
それは、渡り廊下を歩いていた時の事……
タイミングが良いと言おうか……はたまた、悪いと言おうか……

『あのね!ちょっと早いんだけど、バレンタインチョコ……受け取って下さい!』
勢い良く差し出す女生徒。紗貴は、思わず影に隠れてしまった。何だか、覗き見の様で気が引けるが……気になるものは仕方ない。思わず耳をそばだたせる。
『ごめん。俺、甘いもの苦手だから。』
緋岐は、ただそう一言残してその場を足早に去って行った。
女生徒は、ショックだったのか……その場に佇んだまま泣いている。
紗貴は複雑な心境だ。
その一件で、紗貴はバレンタイン戦線離脱を決心したのだった。

……だが……

『チョコはあげるべき!』

クラスメートの思わぬ抗議が、ぐるぐると紗貴の頭を回る。
「でもなぁ……甘いモノ嫌いなの知ってて渡すのって、どうなの?」
とか思う訳で……
「突き返されたら……」
そんな想像するだけで、結構傷付いているのに、実際に突き返されたら……
「絶対、立ち直れない……」
思わず溜め息をついて、肩を落とす。
「どうかしたのか?」
「ひゃっ!?」
後ろからいきなり声を掛けられて声を上げる紗貴に、声の主……現在紗貴の悩みの種(?)は眉を寄せる。
「どうしたんだ?」
「いやいやいや!何でもない!」
その必死さが、怪しさを倍増させているのだが……
「まあ、いいや。それ持つ……」
言葉と共に、紗貴が抱えていた段ボールを横から奪う。
「あ……りがとう……」
とりあえず、「いや、大丈夫」やら「ごめん」だとか言っていた頃に比べたら、大進歩だ。思わず、苦笑しながら緋岐が応える。
「どう致しまして。」
そうして、並んで廊下を歩き出した。
こんな光景も、今では全く珍しくない。
珍しくはないのだが……今日は妙によそよそしい。
お互い、そわそわしているせいか、相手の異常に気付かない。
「あの」
「あのさ」
二人の声が重なる。思わず、立ち止まって顔を見合わせた。
「……お先にどうぞ。」
「そっちから言えよ。」
「いやいや。」
無意味な押し問答……もとい、譲り合いが始まる。
先に折れたのは緋岐だ。

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2月14日

セント・バレンタイン

菓子屋の陰謀?

チョコレート会社の策略?

そんなの関係ない

それは

世の女性にとって

聖戦と言っても過言ではない

チョコレート
或いは
ケーキ
はたまた
手編みのセーター……

彼女達は
思い思いの武器を手に

意中の男性のハートをぶち抜かんと

出陣する

そう……

セント・バレンタイン

それは

もう一つの

ハルマゲドン

なのである



「可愛いよねぇ……」
バレンタインの話題で盛り上がるクラスメート。
何とも微笑ましい光景に、紗貴は思わずそう暢気に呟いた。
「瑞智さん、瑞智さんにもあげるからね」
輪の中の一人が、紗貴にそう言葉を掛ける。
「ありがとう。楽しみにしてるね。」
そう応えたのが、どうやら運の尽き(?)だったらしい。
「私もあげるわ!」
「心配しないで、本命は紗貴ちゃんだから!」
訳の分からない告白までされて、今度は思わず一歩退きながら応える。
「あっ……ありがとう……」
1年3組委員長瑞智 紗貴は、そんじょそこらの男子よりも逞しい。
背丈もそこそこ高く、文武両道……しかも女子にはさり気なく優しい、気遣い屋さんだったりする。
何よりそのリーダーシップ振りといったら、まさに“理想の王子様”だ。
スカートを履いていようと、些細やかなら胸に膨らみがあろうと、そんなのは些末な問題でしかない。
そう、“憧れ”に性別の壁はないのだ。

「そういえば、瑞智さんは鴻儒君に何あげるの?」
実は、紗貴を取り囲んだクラスメートの目的はここだったりする。
半年ほど前、紗貴には鴻儒緋岐という彼氏が出来た。
この鴻儒緋岐という少年……彼もまた、女生徒の理想を地で行く少年である。

文武両道
眉目秀麗

天は二物を与えず

そんな言葉とは無縁の少年だ。
だが……
女性慣れしていると勝手に思われていた、この少年……
実は、大変な奥手で鈍感だという事が発覚。
しかも、よりによって想い人は……

「は?コイ……鯉は食べた事ないなぁ。」

「キス?ああ、海魚ね!あれは塩焼きにしたら美味しいよ。」

そんな、恋愛回路が死滅しているんじゃないかと疑われている委員長だ。

“委員長!気付いてあげて!”

切なる3組の願いが届いたのか、今や二人は誰もが認める最強カップルだ。
カップルが誕生した瞬間、3組のクラスメートが妙な達成感に心を満たされた事は、当人達の預かり知らぬ事である。

拍手

え?
うちの委員長について?
ああ、鴻儒の事か

最初は、取っ付きにくい嫌なヤツって印象だったなぁ。
だってさ
あの外見でスポーツ万能
しかも常に成績トップ
女子にも人気あって……俺初めて見たもん!下駄箱から溢れるプレゼントとか!
必ずラブレター入ってるし

「ドラマか漫画かよ!?」
って感じ?

正直、羨ましいっていうの?

いや!今は全然っ!

きっかけ?
きっかけかぁ……やっぱりあれかな。

5月くらい?
6月だったっけ
まあ、どっちでも良いんだけどさ

いきなり、鼻頭に絆創膏付けて来た事があって

クラスの皆で詰め寄ったら

「ゴリラ女に投げ飛ばされた。」

の一言。
そこで、ピンと来たね!今朝、3組の委員長……瑞智さんって人なんだけど、痴漢捕まえたって結構な騒ぎになって

ただ、本物の痴漢捕まる前に、男子生徒を間違って投げ飛ばしたらしいんだ。
その、『投げ飛ばされた相手』っていうのが……

つまり……

鴻儒だったわけで……

あの事件(?)をきっかけに、鴻儒とも普通に話すようになったんだ。
怪我の功名ってやつ?

で、よくよく話してみると、いいヤツでさ
女子が勝手に騒いでるだけで、本人は至って普通。むしろ……

「俺、女は苦手だ。」
って、眉しかめて言うんだ!
普通だったら、「は?何それ、嫌味?」とか、ムカッて来るんだろうけど、そこはほら、鴻儒だから。

つまり……

良く言えば『硬派』
悪く言えば『奥手』
なんだよ。

しかも、押しに弱いもんだから
「一日だけでいいの!付き合って!」
とか
「付き合ってみたら、相性いいかもしれないじゃない!」
とか

めげずに粘り強くアタックされたら、思わず頷いてしまう……らしい。

だから
『彼女が沢山いる』
とか
『彼女は取っ替え引っ替えだ』
とか言われるんだよなぁ……

実際……
時々……
本当に時々だけど
「こいつ誰!?」
ってくらい、女子の扱いに手練れた一面もあるけど……
あれだけ女子に言い寄られれば、そりゃ少しは慣れるのも納得だよな。

で?
あ、そうそう…今回は鴻儒と瑞智さんについてだっけ?

判りやすい変化だったよ。

典型っていうのかな

だって、ずっと目で追ってるんだよ?
しかも……
瑞智さんが怪我したら、すっ飛んで行くし

拍手

「成る程、天海の誕生日がもうすぐだな。」
「話の流れ的に、おかしくないか?将の情報なかっただろ……」
「シャラァップ!」
今度は佐藤君の隣に座っていた木田君が緋岐の言葉を遮る。
「いいか!?天海の誕生日こそが、今回の作戦の要!一番重要なんだよ!」
「いやだから……もう、いいよ……」
熱く燃えたぎるクラスメートに何を言っても、まさに“暖簾に腕押し”状態である事を悟った緋岐は、溜め息混じりにうなだれた。
「まあ、作戦を聞け!」

~シミュレーションスタート~
緋岐「もうすぐ将の誕生日なんだけど……プレゼント、一緒に選んでくれないかな?」
紗貴「まあ、奇遇ね!私も買おうと思ってたの……」
緋岐「よし、じゃあ日曜日に一緒に行こう!君の家まで迎えに行くよ。」

「いいか?これで、最初の“誘い出し”はバッチリだ。」
「何か微妙にキャラ違うけどな。」
無駄だと判っていながら、そこはなんとなく譲れなくて緋岐は呟く様に抗議する。
「そして……次だ!」

~シミュレーションスタート~
※とりあえず、プレゼントは適当に選んで、さっさと買う!
緋岐「今日はありがとう……実は、映画のチケットがちょうど2枚あるんだけど、一緒にどうかな?」
紗貴「いいわね。私、映画大好き!」

「……と、まあこうなるわけだ。」
将のプレゼント選びが適当過ぎるのも、当然気になったのだが……
それより気になったのは……
「こんな、コテコテのラブストーリー……俺嫌い何だけど……」
思わず眉が寄ってしまう……チケットには見つめ合う男女を取り囲むバラの花輪に、「あなたの瞳に首ったけ~Foreign Love~」と題名が豪華な金色で書かれている。
どう考えても、苦手なジャンルだ。
「馬鹿だな!中身は関係ない!問題は場所だよ!」

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学生
趣味:
散歩、サイクリング、世の中の不思議について考える事
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尚、『胡蝶の夢、泡沫の空』で頂いた拍手の返信も、ここでしております♪
皆さん、よろしくお願いしますm(__)m
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