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そっと近付くと、ぐいっと紗貴の肩を引き上げる。
「ちょっ!?」
肩を抱き寄せられた様な体勢に、紗貴は顔を真っ赤にして抗議の声を上げる。が、全く身体には力が入っていなくて…
「案外、軽いんだな。」
反論出来ない紗貴を、ここぞとばかりにからかう緋岐。
「うっ……」
真っ赤なまま、言葉もなかったが、レスキュー隊員に促されるまま迎えに来た車に乗り込む。そして遠慮がちに緋岐を窺い見ながら、紗貴が口を開いた。
「あの、ホントにごめんね…ありがとう…」
「もう、聞き飽きたよ…」
苦笑しながら応える緋岐に、紗貴は返す言葉がなくて…
「何か、いつも助けられてばっかりだね…」
そう小さな声で呟いた紗貴を思案げに見つめていた緋岐は、重たい口を開いた。
「じゃあさ、一つお願いがあるんだけど…」
「何?私に出来る事なら何でも言って!」
紗貴のその、一点の曇りもない純粋な眼差しに、緋岐は少し口ごもりながら言う。
「名前…名字じゃなくてさ、名前で呼んで欲しいんだけど…」

ずっと言いたかった事

そして

ずっと言えなかった事

今更だ……

今更、兄が羨ましいなんて、言い難くて…

でも

「紗貴」と自然に呼び捨てにしてしまえる事が

「ていちゃん」と名前で呼ばれている事が羨ましくて…


たかが名前

されど名前

お互い、名字で呼び合うそこに、見えない壁があるような錯覚に幾度陥った事か…

「え……え?いや……」

動揺を露にした紗貴に、何となくムッとして緋岐は続ける。

「詆歌は“ていちゃん”で何で俺は“鴻儒くん”なんだよ…」

そのもっともな抗議に、紗貴はしどろもどろに応える。

「いや、だって…二人とも“鴻儒くん”だと解り辛いし…」

呼びたい名前がある

でも

いざ呼ぼうとしても

それは口には出来なくて…

このもどかしい気持ちの名前を

紗貴はまだ知らないのだ。

どう自分の思いを伝えたものか、考えあぐねて…紗貴は反撃に出た。

「そっちだって…名字じゃない…」
「え?」
「さっきは、名前で呼んでくれてたけど。」
「いや、さっきのは咄嗟の出来事で…」
形勢逆転である。先程までは問い詰める側だった筈なのに、
言葉が見付からない。

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バスの中に、悲鳴が連鎖する。

それは、刃を向けられた少女に対してか

はたまた暴走バスの前で不幸にも硬直してしまっている青年に対してなのか

或いは双方に対してのものか…

叫ぶ本人達でさえ判らないというのが、本音かも知れない。

ともかく、緋岐の視界を支配しているのは、今まさに紗貴に襲い掛からんとする、大行の刃だった。
他の悲鳴など、聞こえてすらいない。
考えるより先に、身体が動いていた。
こんな恐怖を感じたのは、初めてかもしれない。

「紗貴!」

全ての動きが、緩慢に感じてもどかしい。

手を必死に伸ばした。届く様で触れる事さえ出来ない距離に、焦燥に駆られる。

キイィィィッ!

急ブレーキに、バスが耳障りな悲鳴を上げた。

その悲鳴に混じって、何かが破裂する様な音が響く。
だが、そんな物音に耳を傾ける余裕が、この状況下である筈もなく…

急ブレーキと同時に、大きくハンドルを切られたバス車内は、自身の重心すら保てない程の遠心力に襲われた。
半恐慌状態の車内で、人ならば受けるであろう慣性をまるで無視した動きの三人に気を留める者はなかった。

「俺をっ…俺を馬鹿にするなぁ!」
狂気に満ちた、大行の眼差しを運転席から立ち上がり対峙した紗貴が真っ向から受け止める。
「天降し依さし奉りき……」
向けられた刃に臆する事なく、手で印を組むと、大行に憑いた妖を祓う呪を唱え始めた。

ヤメロ

ヤメサセロ!

「せっかく、手に入れた力を手放してなるかぁ!」

オンナ ヲ コロセ!!

渦巻く狂気に身を委ね、甘美な闇の囁きのまま、容赦なく刃を紗貴に向ける。

ザクッ!

肉を裂く独特の感覚に陶酔する間もなく、大行の目は大きく見開かれた。

紗貴へと躊躇いなく振り下ろされた刃は、だがしかし紗貴の頬を掠めただけに終わったのだ。

柄を伝い、血が滴る。

「遺る罪は在らじと 祓え給え 清め給ん……裁禍!」

一瞬で事は収束を迎えた。

紗貴が印を切ると同時に、緋岐が大行を投げ飛ばす。

大行に憑いていた妖が祓われた事により、意識を取り戻したバスの運転手と、サラリーマン風の男性が数名で、大行を取り押さえた。

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「運命なんて…どこにもない……道は、自分で切り開くものだ……」

自分の運命を
存在そのものを
呪った事がある

赦されない罪に
眠れない日を
幾夜過ごしただろう?

それでも…

「悲しいことや辛いことがあったとしても…うちのめされても、一生抜け出すのは無理だなんて……そんなこと、ないんだ…」

例えば
もう一度笑ったり
誰かを好きになったり…

「誰にだって、出来るんだ…」

大行はその言葉を受けて、皮肉に歪んだ笑みを口許に浮かべた。
緋岐を睨み付けるその双眸は、妬みの色に染まりきっている。
「いいよなぁ…お前みたいな恵まれてる奴には、わかんないよなぁ!」
闇が、じわじわと内側から大行を侵食していく。
「どうせ、心の中じゃ笑ってるんだろ!?」
「なっ……そんな事ない……」
緋岐の否定を、大行は鼻で笑い飛ばす。
その瞳は常軌を逸していた。
「何もかも、不自由なくて…悩み何かねえから、そんなエラソーな事言えるんだよ!」
その言葉に気色ばんだのは、緋岐ではなく詆歌だ。

黙って聞いてりゃ、調子に乗りやがって…

うちから沸く、自身のものではない純粋な“怒り”に緋岐は慌てる。
「詆歌…ダメだ…」

うるせぇ!代われ緋岐!こんなヤツ…

そこまでだった。詆歌の言葉が遮られる。
遮ったのは、けたたましいバスのクラクションだ。
自然と視線は紗貴に集まる。
「さっきから、黙って聞いてりゃ…」
相も変わらず、紗貴の視線は前を向いたままだ。
だが後ろ姿から迸しる殺気は、一般人をも怯ませる。
「人間生きてりゃねぇ、二つや三つや四つや五つくらい悩みあるのよ!」
「いや…五つはいくらなんでも多過ぎじゃ…」
行大は思わず…遠慮がちに言う。しかし…
「うるさい!黙れ!このミクロ!」
紗貴の罵倒が勝っていた。
「ミッ…ミクロ…?」
「あんたなんて、何の度胸もない…ただ逃げてばかりの臆病風に吹かれてる、ちっちゃい、けつまらない男なだけじゃない!」

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兄と彼女が

羨ましいなんて

今更言えない

つまらない男の意地とか

プライドとかが邪魔していて…

きっと

それは

とても簡単なこと。

そして

俺には

とても難しいこと。



「しっかり運転しやがれ!」
「ゴーカートしか運転した事ないんだから、いきなり大型車の運転なんて出来るわけないでしょ!?なめないで!」
犯人が真っ青になりながら、抗議の声を上げる。
紗貴も必死だ。アクセルとブレーキの区別もままならない。
ハンドルを抱える様に握りしめており顔面は蒼白を通り越して、限りなく白に近い。
視線は真っ直ぐ前を見据えたまま瞬き一つしはしない。
「ちょっと、どいてよね!」
必死に叫んだところで、外に聞こえるはずもなく…
迷惑極まりない暴走バスに、クラクションの大合唱が抗議の声を上げる。
「次の交差点を右だ!」
「みっ……右ねっ!」
言うなり、バス車内を多大な遠心力が襲った。
「お前、アホか!?ブレーキくらい踏め!」
思わず後部座席から詆歌が声を上げる。どうやら頭を強かに窓へ打ち付けたらしく、幾分目に涙を溜めたまま頭をさすっている。
「アクセルとブレーキ間違ったの!気が散るから、ていちゃん黙ってて!」
苛立ちを隠しもせずに負けじと紗貴も叫ぶ。
この状況…というよりこの緊迫した空気の中、極々普通に会話をする少年少女の豪胆さを誉めるべきか、それとも無神経さを呆れるべきか…
それすら選択する余裕が、今の乗客にはない。
無理もなかろう。
バスジャックされたというだけでも不運を嘆くに値するというのに、今正にバスは命懸けのカーチェイスに突入したのだから…
後方からは、サイレンの音が明らかにこのバスを追っている。
バスの異常に気付いた一般人の誰かが通報したのだろう。
「そこのバス止まりなさい」
と、これまた何の捻りもない決まり文句が聞こえて来た。
「ねえちょっと、止まれって言われてるわよ!?」
紗貴が、犯人にお伺いを立てる。返答内容は予想するに難くない。
「止まれと言われて誰が止まるか!」
興奮状態の犯人は、紗貴の首筋に刃渡り10cm程の果物ナイフを突き付けた。
突き付けられたところから、血が滲む。
それを見た詆歌の血相が、明らかに変わった。
視線だけで殺せそうな…そんな迸る殺気を身に纏う。

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Data3/28 18:09
To.さと兄

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<本文>
テメーらで何とかしろ
今日の俺は非番だ。休みだ。巻き込むな。

――――――――――

「あいつっ…職務怠慢で訴えてやる!」

「おい……」

「ホント…市民のピンチなのに…っていうか“ていちゃん”でいいじゃん」

「あの…」

「はぁ!?俺は男だ!“ちゃん”付けるな!お前…紗貴“ちゃん”って呼ぶぞ!?」

「だから……」

「いや、それは堪忍して…今更ていちゃんに“ちゃん”付けされたら鳥肌立ちそう」

「すみません…」

「だから!“ちゃん”付けするな!」

「だから!人の話を聞け!!」

「「うるさいな!!」」

詆歌と紗貴の綺麗なユニゾンに、犯人が一瞬ビクリとするが、そんな犯人を見て自分達の状況を思い出した様に、詆歌と紗貴は硬直してしまった。
詆歌の中で、緋岐は溜息をつくばかりだ。
「おっ……お前達、自分の立場が判ってるのか!?」
刃渡り10cm程の果物ナイフを両手で握りしめた犯人の顔は憔悴し切っており、いまいち迫力に欠ける。
だが、詆歌と紗貴は用心深く両手を上げた。
「どいつもこいつも、俺を馬鹿にしやがって!」
そう吐き捨てるように言う犯人の闇が、一層深くなる。
「…すみません……」
素直に紗貴が謝る。その耳元で詆歌が囁くように言う。
「いっその事、思い切って祓っちまうか?」
その物騒な物言いを、紗貴は視線で制した。

公衆の面前で力を行使する事は、堅く禁じられているのだ。

詆歌は、仏頂面のまま「判ってる」そう短く返事をすると、ふいっと顔を逸らす。
「おい!」
「え?私……?」
話し掛けられた紗貴が振り仰ぐ様に見上げれば、犯人の男が顔を真っ赤にして指差していた。

拍手

Data3/28 17:50
To.さと兄

Sub.ヘルプ

<本文>
バスジャックされた
犯人はチビ、デブ、ハゲの三重苦年齢不詳の男性

助けて

――――――――――

「瑞智……どうだ?」
緋岐は注意は逸らさずに、声を潜めて言う。
「送ったわ」
紗貴も伺いながら、短くそう応えた。
バスジャック犯の出で立ちは、紗貴のメールの通り、余りにも貧相で…
乗り合わせた勇敢な帰宅途中のサラリーマン数人が挑んだのだ。
だが、それは事如く失敗に終わった。
運が良いのだ。この犯人は…異様なまでに…
決して犯人が武道に優れているわけでも、運動能力がずば抜けて良いわけでもない。
ただひたすらに運が良いのだ。
「こいつ!」
また一人、中高年のサラリーマン風の男性が勇猛果敢に立ち向かう。
だが今度はいつ落ちたのか、空き缶を踏んでしまい思い切り転倒し、そのまま気を失ってしまった。
これで何人目だろう…
一人は、高校生のショルダーバッグに足を引っ掻けて転倒した。
次は、上の網棚から落下したボストンバッグが直撃した。
二人掛かりで挑んだ時は、靴紐を結び直す為に屈んだ犯人の上で、同志討ちとなった。
「とことん、運がいいやつだな…」

いや…違う…

「…詆歌……?」

あいつ…憑かれてやがるな。

「…憑く?」
「気付いた?…あの人、“妖”に成りかけてる…闇が憑いてる。」
紗貴の言葉に、緋岐は言葉を失った。

事の発端は遡る事3時間程前……



「もう来たの……」
蘭子は胡散臭さそうな視線を、訪問客に投げかけた。
その言い様に、多少顔をしかめながら応える。
「悪いかよ、待ち合わせ時間通りだろ?」
怯まない相手に、蘭子はさも当然と言わんばかりに言い放つ。
「5分早い!5分も私と紗貴の時間を邪魔しおって……」
その余りの言い草に、緋岐もムッとして噛み付いた。
「なら、遅れて来た方が良かったのかよ。」
その言葉に蘭子は冷ややかな笑みを湛えて言う。
「ほう?貴様から誘っておきながら、遅刻するつもりとは、良い度胸ね。」
流石に二の句が告げない。何をどうやって来ても、結局のところ蘭子の腹の虫は収まらないというわけで……
余りの理不尽さに返す言葉を失ったのだった。

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え?
うちの委員長について?
ああ、鴻儒の事か

最初は、取っ付きにくい嫌なヤツって印象だったなぁ。
だってさ
あの外見でスポーツ万能
しかも常に成績トップ
女子にも人気あって……俺初めて見たもん!下駄箱から溢れるプレゼントとか!
必ずラブレター入ってるし

「ドラマか漫画かよ!?」
って感じ?

正直、羨ましいっていうの?

いや!今は全然っ!

きっかけ?
きっかけかぁ……やっぱりあれかな。

5月くらい?
6月だったっけ
まあ、どっちでも良いんだけどさ

いきなり、鼻頭に絆創膏付けて来た事があって

クラスの皆で詰め寄ったら

「ゴリラ女に投げ飛ばされた。」

の一言。
そこで、ピンと来たね!今朝、3組の委員長……瑞智さんって人なんだけど、痴漢捕まえたって結構な騒ぎになって

ただ、本物の痴漢捕まる前に、男子生徒を間違って投げ飛ばしたらしいんだ。
その、『投げ飛ばされた相手』っていうのが……

つまり……

鴻儒だったわけで……

あの事件(?)をきっかけに、鴻儒とも普通に話すようになったんだ。
怪我の功名ってやつ?

で、よくよく話してみると、いいヤツでさ
女子が勝手に騒いでるだけで、本人は至って普通。むしろ……

「俺、女は苦手だ。」
って、眉しかめて言うんだ!
普通だったら、「は?何それ、嫌味?」とか、ムカッて来るんだろうけど、そこはほら、鴻儒だから。

つまり……

良く言えば『硬派』
悪く言えば『奥手』
なんだよ。

しかも、押しに弱いもんだから
「一日だけでいいの!付き合って!」
とか
「付き合ってみたら、相性いいかもしれないじゃない!」
とか

めげずに粘り強くアタックされたら、思わず頷いてしまう……らしい。

だから
『彼女が沢山いる』
とか
『彼女は取っ替え引っ替えだ』
とか言われるんだよなぁ……

実際……
時々……
本当に時々だけど
「こいつ誰!?」
ってくらい、女子の扱いに手練れた一面もあるけど……
あれだけ女子に言い寄られれば、そりゃ少しは慣れるのも納得だよな。

で?
あ、そうそう…今回は鴻儒と瑞智さんについてだっけ?

判りやすい変化だったよ。

典型っていうのかな

だって、ずっと目で追ってるんだよ?
しかも……
瑞智さんが怪我したら、すっ飛んで行くし

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「成る程、天海の誕生日がもうすぐだな。」
「話の流れ的に、おかしくないか?将の情報なかっただろ……」
「シャラァップ!」
今度は佐藤君の隣に座っていた木田君が緋岐の言葉を遮る。
「いいか!?天海の誕生日こそが、今回の作戦の要!一番重要なんだよ!」
「いやだから……もう、いいよ……」
熱く燃えたぎるクラスメートに何を言っても、まさに“暖簾に腕押し”状態である事を悟った緋岐は、溜め息混じりにうなだれた。
「まあ、作戦を聞け!」

~シミュレーションスタート~
緋岐「もうすぐ将の誕生日なんだけど……プレゼント、一緒に選んでくれないかな?」
紗貴「まあ、奇遇ね!私も買おうと思ってたの……」
緋岐「よし、じゃあ日曜日に一緒に行こう!君の家まで迎えに行くよ。」

「いいか?これで、最初の“誘い出し”はバッチリだ。」
「何か微妙にキャラ違うけどな。」
無駄だと判っていながら、そこはなんとなく譲れなくて緋岐は呟く様に抗議する。
「そして……次だ!」

~シミュレーションスタート~
※とりあえず、プレゼントは適当に選んで、さっさと買う!
緋岐「今日はありがとう……実は、映画のチケットがちょうど2枚あるんだけど、一緒にどうかな?」
紗貴「いいわね。私、映画大好き!」

「……と、まあこうなるわけだ。」
将のプレゼント選びが適当過ぎるのも、当然気になったのだが……
それより気になったのは……
「こんな、コテコテのラブストーリー……俺嫌い何だけど……」
思わず眉が寄ってしまう……チケットには見つめ合う男女を取り囲むバラの花輪に、「あなたの瞳に首ったけ~Foreign Love~」と題名が豪華な金色で書かれている。
どう考えても、苦手なジャンルだ。
「馬鹿だな!中身は関係ない!問題は場所だよ!」

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年明け……新学期早々、1年1組は驚愕の真実に打ちひしがれていた。
「えっと……」
真剣な面持ちで相談されたクラスメイトの佐藤君は、返答に窮す。
「あのさ……初デートもまだって事……?」
やっとの思いで絞り出したのは、そんな質問だ。
そんな茫然自失なクラスメイトの様子に、緋岐は何となくムッとなって応える。
「デートくらい、毎日してる。」
「たっ……例えば……?」
佐藤君が、恐る恐る尋ねると、やはりぶっきらぼうな声が返って来た。
「……部活終わったら、一緒に帰ってるし……」
その時、クラスの心は一つになった。

ーそれ、デートじゃないし!

そこに……

ガラッ

音を立てて開いた戸に、自然と視線が集まった。そこに居たのは、何も知らない子羊……もとい、天海 将その人だ。
クラスメイトの熱い視線に、将は思わず一歩退く。
「なっ……何……?」
将の言葉が早いか、はたまた女子が動くのが先か……
一斉に立ち上がった女子に、将は拉致されてしまったのだった。
それを機にクラスの男子は緋岐を取り囲む様に集結した。
中々のチームプレーである。
「クリスマスは!?恋人イベントだろ!」
取調室さながら、詰め寄るクラスメイトに、緋岐は困り果ててしまって、そっと兄に助けを求めた。……だが……何度呼び掛けても返事がない。

こんな時だけ狸寝入りするなよな!

心中で、思いっきり兄を詰る。
と、それまで思案に耽っているらしい緋岐の言葉を、固唾を飲んで待っていた男子生徒の一人が、痺れを切らして思わず口を開いた。
「どうなんだよ、鴻儒…デートしたのか?してないのか?」
そんな尋問に近い問い掛けに、緋岐は眉根を寄せながら応える。
「ヨンタさん騒動で、それどころじゃなかったというか……」
ヨンタさんが何者なのか、残念ながらこの場に居合わせた面子の中に、知る者はなかったが、ぶっちゃけそんな事は些細な問題でしかない。重要な……というか、大問題なのは……
「デートしなかったのかよ!?」
「まあ……そうなる……」
もはや、溜め息しか出ない。
そんなクラスメイトの様子に、弁明する様に緋岐は口を開いた。
「いや、でもプレゼントは渡したし……」
「えっ!?」
思いもしなかった予想外の出来事に、少年達の顔が期待に輝く。

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問題の迷作劇場、最新話ついに登場(笑)

“原罪”及び“沙羅夢幻想”のキャラクターが縦横無尽に好き勝手走り回っております♪

はっきり言って、作者(生みの親)の私にも、どこに向かっているのか判らないこの話……

キャラクター達の暴走劇に、しばしお付き合い下さいm(_ _)m

それでは、開幕ですwww


紗貴)はい、どうも♪司会進行役の瑞智 紗貴ですwww
じゃあ、サクサク行っちゃいましょう!(^◇^)┛

由貴:とりあえず、この簀巻き状態を何とかしてくれ……

紗貴)あんたは、黙って流されなさい!(押す)

由貴:ぎゃぁあぁぁ!!

緋岐)崖から…落としたのか?
紗貴)先人は名言を残した……いわく、「可愛い子には旅をさせよ。」ライオンなんて、崖から子供突き落とすのよ!?
緋岐)いやいや!実際に実行するのはどうかと思うぞ?
紗貴)滝にでも落ちない限り、大丈夫でしょ。
緋岐)……あ、滝壺落ちた………

由貴:ああぁぁぁ(フェードアウト)

紗貴)……人生、い・ろ・い・ろ♪グッドラック!
緋岐)……(ため息)先に進めるぞ?

桃は、とりあえず川を流されて行きました。
その川のほとりで鍛練を積んでいたおばあさんは、大きな桃を拾いました。

志杏椶おばあさん:あら!可愛い女の子じゃない♪
桃太郎(翠琉):世話になる。

……この場合、桃太郎の性別にツッコミを入れるべきか、それとも簀巻きにされていた桃太郎がどこに行ったのか問いただすべきか、ほんの少しミジンコほど迷いましたが、可愛い桃太郎に主役交代したので、俺としては万々歳……ということで、サクサク進めます。
紗貴)しかも、拾った時点で桃じゃないしねー(笑)
緋岐)それは…あれだ。桃のように可愛いって意味なんだよ!
おばあさんは、おじいさんの待つ家まで、桃を持って帰りました。

キリストおじいさん:へぇ…これまた美人さんだなぁ……おじいさんってのが気になるんだけど?
志杏椶おばあさん:細かい事は気にしない!私なんておばあさんよ?
桃太郎(翠琉):私なんか、男扱いだぞ?

緋岐)それまで、子供がいなかった、おじいさんとおばあさんは、その可愛い女の子に“桃子”と名付け、蝶よ花よとそれはそれは大切に育ててほしいな。むしろ、大切に育てろ!
紗貴)いつの間にか、ナレーションジャックされちゃった……

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HN:
翔 梨藍
性別:
非公開
職業:
学生
趣味:
散歩、サイクリング、世の中の不思議について考える事
自己紹介:
徒然なるままに、色々書いています♪
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尚、『胡蝶の夢、泡沫の空』で頂いた拍手の返信も、ここでしております♪
皆さん、よろしくお願いしますm(__)m
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