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~恋人ごっこ上(1)~
「香雅夜、俺と付き合ってくれない?」
「え?」
桐谷 香雅夜は、自分と同じようにしゃがみこんだままニコニコ微笑む男子生徒に、そんな間抜けな返答をするとウサギの“スケさん”を膝に乗せたまま思案に耽る。
「いいですよ。」
ふわりと微笑んで、香雅夜は頷いた。その予想を裏切らない返答に、少年は苦笑を禁じえない。思わず噴出しそうになるのを、腕に顔を埋めて必死に堪える。そんな様子に何を勘違いしたのか‥‥香雅夜は心配そうに少年を窺い見る。
「あの‥‥よし君‥‥?大丈夫ですか?」
-お熱でもあるのでは‥‥
言いながら差し出す左手は、だがしかし、少年の額に触れることなく上から攫われた。
「おい、バカヤ‥‥何、堂々と浮気してやがる。」
「鋭、早かったですね。」
それでなくとも元来の人相の悪い少年は不機嫌丸出しの今、その迫力は計り知れない。いきなり現れて香雅夜の頭上から彼女の伸ばされた左手を無造作に掴んだ、その殺人犯と見間違うほど凶悪な人相の少年に、香雅夜は少し嬉しそうにそう応える。
「あれ?鋭、いいって言わなかったっけ?」
鋭と呼ばれた少年は、揶揄の色を帯びたその言葉の持ち主を、その眼光だけで殺せるのではないかと思ってしまうほど、睨み付けた。
「由樹‥‥わざとだな?相変わらず、なめた性格しやがって‥‥」
その言葉に少年‥‥坂本 由樹は臆することなく‥‥むしろ、この状況を愉しんでいることを肯定するかの様にニッコリと微笑む。対照的なのが香雅夜だ。今一歩順応し切れていないようで、困惑げに二人を見比べる。
「あの‥‥何のお話しですか?」
口を挟んで良いものか悩んでいたらしい香雅夜は、おずおずと尋ねる。その声に、二人の少年は香雅夜に視線を移す。
「あのさ、香雅夜‥‥付き合うって意味、判ってる?」
そんな、念押しの様な由樹の言い様に小首を傾げる。
「どこかに、お出掛けするんですよね?」
「香雅夜、俺と付き合ってくれない?」
「え?」
桐谷 香雅夜は、自分と同じようにしゃがみこんだままニコニコ微笑む男子生徒に、そんな間抜けな返答をするとウサギの“スケさん”を膝に乗せたまま思案に耽る。
「いいですよ。」
ふわりと微笑んで、香雅夜は頷いた。その予想を裏切らない返答に、少年は苦笑を禁じえない。思わず噴出しそうになるのを、腕に顔を埋めて必死に堪える。そんな様子に何を勘違いしたのか‥‥香雅夜は心配そうに少年を窺い見る。
「あの‥‥よし君‥‥?大丈夫ですか?」
-お熱でもあるのでは‥‥
言いながら差し出す左手は、だがしかし、少年の額に触れることなく上から攫われた。
「おい、バカヤ‥‥何、堂々と浮気してやがる。」
「鋭、早かったですね。」
それでなくとも元来の人相の悪い少年は不機嫌丸出しの今、その迫力は計り知れない。いきなり現れて香雅夜の頭上から彼女の伸ばされた左手を無造作に掴んだ、その殺人犯と見間違うほど凶悪な人相の少年に、香雅夜は少し嬉しそうにそう応える。
「あれ?鋭、いいって言わなかったっけ?」
鋭と呼ばれた少年は、揶揄の色を帯びたその言葉の持ち主を、その眼光だけで殺せるのではないかと思ってしまうほど、睨み付けた。
「由樹‥‥わざとだな?相変わらず、なめた性格しやがって‥‥」
その言葉に少年‥‥坂本 由樹は臆することなく‥‥むしろ、この状況を愉しんでいることを肯定するかの様にニッコリと微笑む。対照的なのが香雅夜だ。今一歩順応し切れていないようで、困惑げに二人を見比べる。
「あの‥‥何のお話しですか?」
口を挟んで良いものか悩んでいたらしい香雅夜は、おずおずと尋ねる。その声に、二人の少年は香雅夜に視線を移す。
「あのさ、香雅夜‥‥付き合うって意味、判ってる?」
そんな、念押しの様な由樹の言い様に小首を傾げる。
「どこかに、お出掛けするんですよね?」
もう限界だった。由樹は腹を抱えて笑い出し、比例するように鋭の周りの温度が下がってゆく。
「どこまで天然なら気が済むんだ、テメーは‥‥」
そんな呟きの中には、人知れない鋭の苦労故ゆえの哀愁が含まれていた。多分、そんな事に気付くのも唯一の友人だと言っても過言ではないだろう、由樹くらいだ。一般人が聞いたなら十中八九、恐怖の余り平謝りしている状況である。
「鋭、そんなに怖い顔をしているから、スケさんが逃げてしまったじゃないですか」
そんな鋭も何のその‥‥自分の膝からピョンと飛び退いて、小屋の中に逃げるように走っていったウサギを視線で追いながら香雅夜は残念そうに鋭に反論する。
もう返す言葉もないといった様に、憤然と鋭はため息をついた。
「香雅夜‥‥あのね、俺が言ったのは“男女のお付き合い”なんだよ?っていうか、大抵異性が寄ってくるときは、そういった邪な思惑があるって疑わないと‥‥」
なので、由樹は判りにくい鋭の心中を諭すように、香雅夜に言う。
「よし君は、そんな人じゃありません。」
すると香雅夜は、ニッコリと微笑んで、そう断言した。ここまで信頼されていることを喜ぶべきか、それとも異性として全くといって良いほど意識されていない事に対して嘆くべきか‥‥由樹に迷う余地など在ろう筈がない。
その“信頼”が嬉しくて、そこはかとなくくすぐったくて、由樹は微笑む。
「それに、香雅夜にとって“トクベツ”は鋭だけだもんねぇ。」
そう続けて言う由樹に、香雅夜は何らてらいもなく、はにかむ様に微笑むと「はい」と一つ頷いた。
「で‥‥だ。ずっと前から気になってたんだが‥‥ウサギに“スケさん”はねえだろ‥‥」
照れ隠しなのか、わざとらしく咳払いをすると、鋭は小屋の端っこに丸まっている白いウサギを見ながら言う。
「これで、カクさんが居たら、可笑しいよね-」
冗談交じりに、由樹も続ける。
「え?いますよ?カクさん‥‥ほら‥‥」
<続く>
「どこまで天然なら気が済むんだ、テメーは‥‥」
そんな呟きの中には、人知れない鋭の苦労故ゆえの哀愁が含まれていた。多分、そんな事に気付くのも唯一の友人だと言っても過言ではないだろう、由樹くらいだ。一般人が聞いたなら十中八九、恐怖の余り平謝りしている状況である。
「鋭、そんなに怖い顔をしているから、スケさんが逃げてしまったじゃないですか」
そんな鋭も何のその‥‥自分の膝からピョンと飛び退いて、小屋の中に逃げるように走っていったウサギを視線で追いながら香雅夜は残念そうに鋭に反論する。
もう返す言葉もないといった様に、憤然と鋭はため息をついた。
「香雅夜‥‥あのね、俺が言ったのは“男女のお付き合い”なんだよ?っていうか、大抵異性が寄ってくるときは、そういった邪な思惑があるって疑わないと‥‥」
なので、由樹は判りにくい鋭の心中を諭すように、香雅夜に言う。
「よし君は、そんな人じゃありません。」
すると香雅夜は、ニッコリと微笑んで、そう断言した。ここまで信頼されていることを喜ぶべきか、それとも異性として全くといって良いほど意識されていない事に対して嘆くべきか‥‥由樹に迷う余地など在ろう筈がない。
その“信頼”が嬉しくて、そこはかとなくくすぐったくて、由樹は微笑む。
「それに、香雅夜にとって“トクベツ”は鋭だけだもんねぇ。」
そう続けて言う由樹に、香雅夜は何らてらいもなく、はにかむ様に微笑むと「はい」と一つ頷いた。
「で‥‥だ。ずっと前から気になってたんだが‥‥ウサギに“スケさん”はねえだろ‥‥」
照れ隠しなのか、わざとらしく咳払いをすると、鋭は小屋の端っこに丸まっている白いウサギを見ながら言う。
「これで、カクさんが居たら、可笑しいよね-」
冗談交じりに、由樹も続ける。
「え?いますよ?カクさん‥‥ほら‥‥」
<続く>
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